―「山を登るから飯は食べていく？」
案内役の友人がそう聞いてきたが、まだ11時20分頃ということもあり結局みんなお腹は空かないということでそのまま進むことにした。ペグマタイト岩脈からほんの数分の場所にある、長垂公園というところで自転車は止まった。４人は自転車を公園の入り口にとめ、そこから降りると目の前にある公園周辺の案内が書かれた掲示板に見入った。天然記念物の指定範囲などがそこには描かれてあった。この公園も先ほどの岩脈から続く天然記念物の指定範囲内らしい。確かに周囲にある石ころや岩はキラキラと光っていた。掲示板を一通り見てから再び周囲をよく見渡してみた。公園には滑り台以外何もないといっても過言ではなかった。（こんなところでこれから一体何がはじまるんだ？？？…もしかして指定範囲を確認するためにわざわざ自転車を止めたのだろうか？）そう思うや否や、１人が突然駆け出した。滑り台のほうへ！…そして滑りはじめた。楽しそうに…。続けとばかりにもう１人駆けて行き…また彼も…。「なんだか楽しそうやね、あの２人（笑）」思わずその言葉が出てきてしまった。「ほんと（笑）」と残った１人もうなずく。休憩するためにここに来たんだ、という安堵感と、（恐らくはウケ狙いであろう）滑り台の２人の行動に自転車で少し疲れていた私はなんとなく元気を取り戻した。
しばらくすると滑り台組みが戻ってきてこう言った。「さあ行こうかね。」休憩もしたし今から出発か、そう思い私は自転車に乗り込もうとした。しかしどうも様子が変である。みんなは公園の脇に敷かれている緩やかな登りの歩道を歩きはじめた。歩道の右側には土の斜面、そこには木が生い茂っていた。…少ししてふいに足が止まる。１人がおもむろに木々の間から林の中に入って行った。（えっ！まさか！）恐る恐る聞いてみた。「何しに行くと？」返事はこうだった。「ん？鉱石取りに行くんだけど…。知らなかった？」…聞いてなかった。あの言葉が脳裏に蘇る。「山を登るから飯は食べていく？」…山を登るから…山…これ…山登り…。自転車の疲れで脚は少しぐらぐらしていた。（行きたくない！）こんなのを登って帰りは大丈夫なのだろうか？しかし取り残されるのも嫌なのでしぶしぶついて行った。
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