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私の名前は「そら」。
誰にも言いたくない話だから、このノートに綴ることにします。
すぐ目の前に海の見えるお気に入りの草原で、私は学校帰りに一人たたずんでいた。
雲ひとつなく、ぽかぽかとした穏やかな春の昼下がり。空と海はどこまでも青く澄んでいて、私のこころとはまるで正反対だった。
「はぁ…」
ため息とともに近くにあった石ころをつかんで海に思い切り投げつけた。波のあまり立っていない水面に大きな波紋が広がっていって、すぐに消えていった。その行為が虚しくなって、しゃがみ込み、顔を伏せた。
今日は私の大親友の誕生日だった。小さいときから仲が良くて、強くて優しい彼女はいつでも私のことを守ってくれた。私が間違ったことをすれば叱ってくれたし、嬉しいことがあれば誰よりも喜んでくれた。中学校のとき、父の仕事の都合で離れ離れになった。体が小さく病気がちな私は、いつも学校でいじめられていたけれど、そのたびに電話で励ましてくれた。心の支えになってくれた。そして高校で再会し、同じクラスになったときは本当に嬉しかった。あの日も今日みたいに穏やかな陽気で、この草原で２人で一日中語り明かした。
そんな大親友の彼女と、今日初めてケンカした。一方的に私が悪いのに、彼女はたいして怒るわけでもなく、優しく諭してくれた。でもなぜか今日の私は彼女のことをどこまでもしりぞけてしまった。
「うん…わかったよ…」
そういうと彼女はうっすらと目に涙を浮かべて教室から出て行った。
何も今日でなくともよかったのに…。誕生日なのに「おめでとう」の一言も言えずにケンカしてしまった私に腹が立つ。どうしてケンカなんてしてしまったのだろう…。本当に腹が立つ。
両手をぎゅっと握り締めて、思い切り地面に叩き付けた。落ちていた小石が小指に刺さって血がじんわりとにじみ出てきた。
誰もいない柔らかな日差しが降り注ぐこの草原。彼女と再会した日のように私は大声で泣いた。なぐさめてくれる彼女はここにはいない。